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夢の超特急(その2) [幻想の未来社会]

子供の頃、何度も読み返して未来を夢見た本の一つに、

  • 21世紀の鉄道(著者:一條幸夫、出版:至誠堂)

があります。大阪万博が開催された1970年に出版された本で、著者の一條氏は、当時の国鉄(今のJR)常務理事でした。

その内容は、1990年に開通したことになってる第2新幹線(今、山梨実験線で開発中のマグレブに相当します)の描写から始まります。これを読んでた当時、私は東海道新幹線に乗って大阪万博へ行っていた、「輝ける未来」を夢見る少年でした。だから、「なるほど、次はこれが出来るのか~」なんてウレシクて何度も読み返したものです。「磁気浮上して、時速500kmで東京-大阪間を駆け抜ける」第2新幹線...(∇〃)。o〇○ポワァーン♪

でも、いつまで経っても第2新幹線など建造されず、その代わりに聞こえてくるのは「整備新幹線」と、その建造による地方負担や在来線の赤字化問題ばかり。

現在、JR東海では中央新幹線用にマグレブを開発中とのことですが、これが営業段階まで到達するには下記の課題をクリアする必要があるでしょう。

  1. 営業に耐える水準までマグレブの信頼性(例えば、超伝導の安定性)が確保されること。
  2. 航空機に対抗できる運賃の価格設定ができる程度まで、建造費や維持費を安くできること。
  3. 「中央新幹線」の営業開始によって、「東海道新幹線」を含むJR東海全体の営業収支が大きく悪化しないこと。

上記第1項は優秀な技術者たちの努力によって達成可能かも知れません。また、第2項も建造費を100%国税でまかなうことにより(その是非はともかく)、あるいは可能かも知れません。でも、第3項は、現実問題として実現可能なのでしょうか。

もちろん、「東海道新幹線」の代替手段(バックアップや大改修工事に備えた)としての「中央新幹線」の必要性は理解できます。でも、今の世の中が求める高速鉄道(そして、高速道路や航空会社が恐れる高速鉄道)の方向性は、現新幹線の超・高速化より、超・低運賃化の様な気がします。


さて、「21世紀の鉄道」の本には、第2新幹線や通勤新幹線の構想ばかりでなく、航空機,自動車,船舶の未来についても述べてます。もちろん、著者が当時国鉄の経営層であることからして、鉄道中心的な話になってます。でも、各交通手段の得意不得意を踏まえて、総合的な我が国の未来交通網を描こうとしている点は評価すべきでしょう。

そして、今再びこの本を読んで感じることは、著者は、高速鉄道網(新幹線網)の発達が、鉄道の役割分担を「全国各地をくまなく網羅する交通手段」から、「我が国の経済を支えるバックボーンとしての交通手段」に変貌させることを予測していた様に思えます。つまり、「新幹線が中核都市をむすぶ新しい交通手段だとすれば、高速道路は、二〇ないし三〇キロ単位の、中核都市圏内あるいは近隣中核都市間の近距離を主体とする交通機関であって(「21世紀の鉄道」より)」と、郊外の交通手段は自動車に任せることを想定しています。

だとすると、今日の「整備新幹線」の建造に伴う在来線の赤字化は、既に昔から予想できた出来事であり、「新幹線網の発達」は「在来線の衰退→道路交通手段への代替」との引き替えであるは必然と言わざるを得ません。

こうなると、「整備新幹線」の問題は、実は「新幹線」を建造すること自体が問題なのではなく、それにより「在来線の役割が道路網にシフト」する現実を、関係者が理解していない(または知っていて目をつぶっている)ところにあるのかも知れません。

やれやれ…、私の夢見た21世紀の高速鉄道網が色あせていく...(T^T)

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