SSブログ

世界の衛星打上げロケット(ロシア編1) [宇宙村]

さて、今回は世界の衛星打上げロケットロシア編1です。

実は、私自身、ロシア系(ロシア、ウクライナ、カザフスタン)における衛星打上げサービスの実態について、あまり良く知りませんでした。それが、このロシア編を書くためネット上を調べてみて、初めてオボロゲながらその全貌が見えてきました。

すなわち、「ロシア系独自の打上げサービス会社は1社程度。多くはロシア系と欧米系の共同設立会社を介して、打上げサービス業界に参入」している様です。

  1. ロシア系独自の打上げサービス会社
     Kosmotras社
      ・Dneprロケットを使った打上げサービス
  2. ロシア系と欧米企業の共同設立による打上げサービス会社
     Sea Launch社
      ・Zenitロケットを使った打上げサービス
     ILS社(←米国編2でもご紹介)
      ・Protonロケット、Angaraロケットを使った打上げサービス
     Eurockot社
      ・ROCOTロケットを使った打上げサービス
  3. ロシア系と欧米企業の共同設立によるロケット供給会社
     Starsem社
      ・Soyuzロケットを欧州の打上げサービス会社に供給


(1)Kosmotras社

このISC Kosmotrasは、ロシア(及びウクライナ、カザフスタン共同)の打上げサービス会社です。START(戦略核兵器削減条約)により廃棄対象になったICBM(SS-18)を流用したDnepr-1ロケットを用いて、低高度軌道への衛星打上げを行ないます。

この会社における打上げサービスの特徴は、「SS-18をほとんどそのまま使っている(様に見える)」点でしょうか。後述のROCOTロケットの様に上段ロケットを追加することもなく、また、打上げにはICBM同様の地下サイロ設備を使います。

同社がネット公開しているDnepr Space Launch System User’s Guideから、このロケットの輸送能力を下記の様にピックアップしてみました。

  1. ロケット
    ・Dnepr-1 [3段式]
     低高度周回軌道(@傾斜角50.5deg)相当
      3.7t(@高度300km)、2.7t(@高度500km)
     太陽同期軌道(@傾斜角98deg)相当
      1.8t(@高度500km)、0.3t(@高度800km)
  2. 射場
     ・バイコヌール基地(カザフスタン共和国)

なお、この間の8月24日、我が国の小型衛星OICETSとINDEXがこのKosmotras社の打上げサービスを利用して打上げられました(こちらのブログ記事でご紹介)。


(2)Sea Launch社

このSea Launch Company,LLCは、下記企業が共同設立した打上げサービス会社です。

  • Boeing Commercial Space Company(米国)
  • Aker Kvaerner(ノルウェイ)
  • RSC Energia(ロシア)
  • SDO Yuzhnoye / PO Yuzhmash(ウクライナ)

そして、米国編1でご紹介したBLS(Boeing Launch Services)社がこの打上げサービスの営業を担当しています。

このSea Launch社が打上げサービスに用いるZenit-3SLロケットは、第1、2段にYuzhnoye/Yuzhmash社のZenit、第3段にEnergia社のBlock DM-SLを用い、さらにBoing社が衛星格納部分を担当したインターナショナルなロケットです。

また、同社打上げサービスの最大の特徴は、その名前の通り「海上発射」という点です。すなわち、石油採掘用プラットフォームを流用した移動式海上プラットフォームに、カリフォルニア州の港でロケットを載せて赤道近くまで移動、そこで打上げ作業が行なわれます。

赤道近くで打上げるメリットは、主として「衛星の打上げ効率が向上する」、「全方位に対する打上げが容易」の2点でしょう。 なお、陸上打上げ版のLand Launchサービスもあります。

さて、同社がネット公開しているUser’s Guideを入手して、輸送能力の概要をご紹介したかったのですが、それにはキチッとした登録が要求されるので今回は見送りました。従って、下記の輸送能力は別サイトにあった非公式な値です...m(_ _)m

  1. ロケット
    ・Zenit-3SL [3段式]
     低高度周回軌道
      7.0t
     静止トランスファー軌道(@高度200×35786km、傾斜角0deg)
      5.3~6.0t
  2. 射場
     ・移動式海上プラットフォーム(射点:赤道上・西経154度)



以上、文頭に挙げたロシア系の打上げサービスの内、2社分をご紹介しました。残りの3社分は、「世界の衛星打上げロケット(ロシア編2)」に続きます^^;

 

トップページへ
「ブリザドの部屋」親サイトへ


[INDEX]


nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

nice! 0

コメント 2

あにまる

mixiからたどってやってきました。

ロシアのロケット会社の調査、すごいですね!
驚きです。実際にコスモトラス社と1年間仕事をしてきましたが、知らないことが一杯で、とても役に立ちました。

私がコスモトラスと一緒に仕事をさせていただいたときの感想。
インタフェースの相手が直接ロシア人達なのでとても小回りがきくこと。別の打ち上げ会社と打合せしたときには欧米の企業が間に入り、かゆいところに手が届かず、もどかしい思いをしました。

ロシア編2も期待しております。
by あにまる (2005-09-16 01:13) 

ブリザド

あにまるさん、こんばんは^^

>インタフェースの相手が直接ロシア人達なのでとても小回りがきくこと。
おお、なるほど。欧米の会社が介在しないのはメリットにもなるワケですね。
う~ん、貴重な体験談です(私の様なネット検索主体の調査とは重みが違います)。
そうそう、遅くなりましたが、打上げ成功おめでとうございます^^

>ロシア編2も期待しております。
ありがとうございます^^
by ブリザド (2005-09-16 01:51) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0