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世界の衛星打上げロケット(米国編1) [宇宙村]

たまには堅い話題を...(^◇^;)

新聞報道(8月30日付)によると、文部科学省はH-2Aロケットの輸送能力を大幅に増強したH-2Bロケット(旧称:H-2A能力向上型)を2008年度に打上げる計画を明らかにしました。このH-2Bロケットは、国際宇宙ステーションに物資を運搬する無人補給機・HTVの打上げに使われます。

これにより、日本独自の衛星打上げ手段として、M-VH-2AH-2Bという3種類のロケットが揃うことになります。さらに、民間主導のGXロケット(2007年初頭に試験機1号機打上げ予定)が完成すれば4種類になります。

ところで、日本以外の宇宙先進国では、どの様な衛星打上げ手段があるのでしょうか。私自身、ちょっと整理したくなったので、「世界の衛星打上げロケット(まずは中型~大型ロケットを対象)というテーマで、数回に渡ってブログ記事を書きたいと思います(他の軽い話題の合間に...です^^;)。


さて、まずは「世界の衛星打上げロケット」米国編1です。

現在、米国の代表的な衛星打上げサービス(中型~大型ロケット使用)会社は、下記2社の様です。

  1. BLS(Boeing Launch Services)社
    ・Delta II、Delta IV ロケットによる衛星打上げ
    ・Deltaロケットを製造しているBoeing社の子会社
  2. ILS(International Launch Services)社
    ・Atlas V ロケット、Protonロケットによる衛星打上げ
    ・Atlasロケットを製造しているLockheed Martin社とロシアの共同設立会社

これ以外にも、NASAのスペースシャトルを使った衛星打上げサービスが存在したのですが...二度の大事故と機体喪失のため、シャトルによる衛星打上げサービスは事実上なくなりました。


[BLS社のラインナップ]
・Delta II、Delta IV

米国編1では、BLS社が衛星打上げに用いる、Delta II及びDelta IV ロケットの輸送能力について調査しました。その際、参照したサイトは下記の通りです。

Delta II及びDelta IVは多様な打上げ需要に対応するため、ロケット第2~3段、補助ブースタ、フェアリング等に各種バリエーションがあり、その組合わせによって「7320」とか「IV-M」等の型番が振られています。で、その型番によって輸送能力が大きく異なるので、今回は下記の様に各投入軌道に対する代表的な能力範囲を示しました。

  1. Delta II [2段式]
    低高度周回軌道(@高度185km、傾斜角28.7deg)
     2.8t(7320型)~6.1t(7920H型)
    太陽同期軌道(@高度833km、傾斜角98.7deg)
     1.7t(7320型)~3.2t(7920型)
  2. Delta II [3段式]
    静止トランスファー軌道(@高度185×35786km、傾斜角28.7deg)
     0.9t(7326型)~2.2t(7925H型)
    地球脱出軌道(@C3=0.4km2/sec2、傾斜角28.7deg)
     0.7t(7325型)~1.5t(7925H型)
  3. Delta IV [2段式]
    低高度周回軌道(@高度400km、傾斜角51.6deg)
     8.5t(IV-M型)~24.4t(IV-H型)
    太陽同期軌道(@高度800km)
     6.8t(IV-M型)~19.8t(IV-H型)
    静止トランスファー軌道(@高度185×35786km、傾斜角28.5deg)
     4.0t(IV-M型)~10.8t(IV-H型)
    地球脱出軌道(@C3=0km2/sec2)
     2.7t(IV-M型)~9.3t(IV-H型)

上記の輸送能力は、各種条件(打上げ場所、フェアリング寸法、衛星搭載アダプターなど)によって微妙に異なるので、詳細は「Delta Payload Planners Guides」をご覧下さい。

さて、Delta IIとDelta IVを組み合わせた、このBLS社のラインナップを見ると、その輸送能力はH-2Aロケットのおよそ1/4倍~4倍という広範囲をカバーしています。これだけあれば、米国の商業衛星、科学衛星、軍事衛星の打上げ需要のほとんどをまかなうことができるでしょう。

しかも、初代Deltaロケットの初飛行は1960年。それから、改良を加えながら継続的に打上げられて、最新のDelta IVファミリーに至ります。宇宙ロケットと言うと、何やら「最先端技術を結集!」といったイメージがありますが、こういった「実績に基づく安定した(枯れた)技術」も重要みたいですね。


追記1:次回の米国編2では、米国のもう一つの打上げサービス会社、ILS社のAtlas V 及びProtonロケットをご紹介します。
追記2:本文中の打上げサービス会社の呼称を見直し、情報を追加しました(2005/9/8)。

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歌島昌由

このような記事を待っていました。仕事でも使わせて戴きます。
by 歌島昌由 (2005-08-31 23:44) 

ブリザド

歌島さん、こんばんは^^

>仕事でも使わせて戴きます。
ありがとうございます。そう言って頂けると、書いた甲斐があります。
こういう記事を書くのは(自らの趣味とは言え)、結構、体力を消耗するんですよね...(^◇^;)
by ブリザド (2005-09-01 00:00) 

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